90年代R&Bが生んだ歌姫とハーモニー──時代を超えて愛される名曲10選
この記事でわかること
- 01.1990年代、R&Bは歌姫とボーカルグループのハーモニーによって黄金期を迎えた。
- 02.Whitney Houston、Mariah Carey、Boyz II Men、TLCなど、時代を象徴する10曲をリリース背景とともに紹介。
- 03.30年以上経った今も色褪せない、90年代R&Bの音楽的豊かさを再発見するためのガイド。
1990年代、R&Bは黄金期を迎えた。
ゴスペルの土壌から生まれた力強いボーカル、ヒップホップのビートとの融合、そして何より「歌姫(Diva)」と呼ばれる存在の登場。
Whitney Houston、Mariah Carey、Mary J. Blige、
そしてTLCやBoyz II Menといったボーカルグループが、ポップシーンの中心にR&Bを押し上げた時代だった。
今回は90年代R&Bを象徴する10曲を、その背景とともに紹介。
30年以上経った今も、これらの曲が色褪せない理由が見えてくるはず。
Whitney Houston「I Will Always Love You」(1992年)
映画『ボディガード』のサウンドトラックとして1992年にリリースされたこの曲は、90年代R&Bを代表する一曲として今も語り継がれている。
元はドリー・パートンが1974年に書いた曲だが、ホイットニーのアカペラから始まるあのイントロと、クライマックスで一気に解放される声の力強さによって、全く新しい命を得た。
Billboard 100年代総括ランキングでも上位に挙げられるこの曲は、R&Bという音楽が持つ「歌の力」そのものを体現している。
Boyz II Men「End of the Road」(1992年)
ハーモニー重視の90年代R&Bを象徴する名曲として、Boyz II Menの「End of the Road」は欠かせない。
1992年にリリースされたこの曲は、世界的なヒットとなり、R&Bをポップシーンの中心へと押し上げる役割を果たした。
4人の声が織り重なるハーモニーは、ゴスペルの伝統を受け継ぎながら、ポップスとしての完成度を兼ね備えている。
同年のBobby Brown「Something in Common」(Whitney Houstonとのデュエット)と並んで、90年代前半のR&Bバラードの方向性を決定づけた一曲だ。
Mariah Carey「Dreamlover」(1993年)
1990年に「Vision of Love」でデビューしたマライア・キャリーは、90年代を通じてR&B/ポップシーンの中心に立ち続けた歌姫だ。
1993年の「Dreamlover」は、彼女の代表曲のひとつであり、7オクターブの声域を活かした表現力が存分に発揮された一曲として知られている。
90年代を通じて、マライアはNo.1ヒットを15曲記録し、ビルボードの1990年代アーティスト総括ランキングで歴代1位の座に立った。
その存在自体が90年代R&Bの黄金期を体現している。
TLC「Waterfalls」(1995年)
1994年11月15日にリリースされたTLCのアルバム『CrazySexyCool』からシングルカットされた「Waterfalls」は、1995年5月22日にリリースされ、Billboard Hot 100で7週連続1位を記録した。
リスクを伴う恋愛や危険な行動への警告を歌ったこの曲は、商業的な成功と批評的な評価を両立させた90年代R&Bの最重要曲のひとつだ。
『CrazySexyCool』というアルバム自体も、ミュージック・マガジン誌の「R&Bアルバム・ベスト100」で1位に選出されるなど、ディアンジェロの『Voodoo』のような後の名盤と並んで高く評価されている。
T・ボズ、チリ、そしてラッパーのレフト・アイという3人の異なる個性が組み合わさったTLCのサウンドは、R&Bとヒップホップの融合という90年代の重要な潮流を体現していた。
Toni Braxton「Un-Break My Heart」(1996年)
BabyfaceとL.A. Reidに見出されたトニ・ブラクストンが1996年にリリースしたこの曲は、Diane Warrenの作曲によるバラードで、Billboard Hot 100で11週連続1位を記録した。
トニのドスの効いた低音ボーカルは、Mariah CareyやCeline Dionと並ぶ「歌姫の時代」の象徴として高く評価されている。
アルバム『Secrets』には、当時のR&B界の精鋭プロデューサーたちが集結し、ソウルシーンからアダルトコンテンポラリーへと橋をかける重要な役割を果たした。
Mary J. Blige「Real Love」(1992年)
「ヒップホップ・ソウルの女王」と呼ばれるMary J. Bligeが1992年にリリースしたデビューシングル「Real Love」は、R&Bにヒップホップのビート感覚を本格的に持ち込んだ転換点となった曲だ。
デビューアルバム『What’s the 411?』(1993年)とともに、後のR&Bシーンに大きな影響を与えた。
ストリートのリアリティとR&Bの伝統的なメロディアスさを融合させたメアリーのスタイルは、90年代後半以降のR&Bの方向性を決定づける重要な存在となった。
Janet Jackson「That’s the Way Love Goes」(1993年)
ジャム&ルイスとのコラボレーションで知られるジャネット・ジャクソンは、1989年のアルバム『Rhythm Nation 1814』で7曲もトップ5ヒットを記録するという驚異的な成功を収め、90年代に入ってもその勢いを継続した。
「That’s the Way Love Goes」はその代表曲のひとつだ。
シンセサイザーを使ったファンクナンバーを軸にしながら、ハードロックやダンスポップの要素も取り込んだジャネットのサウンドは、90年代を通じてシーンの中心に立ち続けた。
Brandy & Monica「The Boy Is Mine」(1998年)
1998年にリリースされたBrandyとMonicaのデュエット曲「The Boy Is Mine」は、Brandy & Monica「The Boy Is Mine」、K-Ci & JoJo「All My Life」、Usher「Nice & Slow」といった歴史的名曲を抑えて、1998年のビルボード年間シングルチャート1位を獲得した。
2人の若き歌姫が同じ男性をめぐって歌うという挑戦的なコンセプトと、息の合ったボーカルワークが話題を呼び、90年代後半のR&Bを象徴する一曲となった。
Aaliyah「Back & Forth」(1994年)
R. Kellyに見出され、14歳でデビューしたAaliyahのデビューアルバム『Age Ain’t Nothing But a Number』(1994年)からのシングル「Back & Forth」は、R&Bとヒップホップの融合における重要な一曲だ。
Billboard Hot 100で5位を記録した。
その後数多くの素晴らしい女性ソウルシンガーが登場した90年代において、Aaliyahの声の美しさと伸びやかさは際立った存在感を放っていた。
Mariah Carey & Boyz II Men「One Sweet Day」(1995年)
1995年にリリースされたこのコラボレーション曲は、Billboard Hot 100で16週連続1位を記録し、1990年代のシングルチャート総括において歴代1位に選ばれている。
マライア・キャリーというソロの歌姫と、Boyz II Menというボーカルグループの組み合わせは、90年代R&Bが持つ2つの大きな潮流──「個の歌唱力」と「グループのハーモニー」──が結晶化した瞬間だった。
歌声がすべてだった時代
10曲を並べてみると、90年代R&Bの豊かさは「歌声そのものの力」に支えられていたことがわかる。
オートチューンも、過剰なプロダクションも必要としない、生身の声がそのまま音楽の核心だった時代だ。
以前、ネオソウル入門ガイドでも触れたように、この時代のR&Bが持っていた表現の豊かさは、後のネオソウルやコンテンポラリーR&Bにも確実に受け継がれている。
30年以上経った今、改めてこの10曲を聴き直すと、その色褪せない強度に驚かされるはずだ。
| 曲名 | アーティスト | リリース年 |
|---|---|---|
| I Will Always Love You | Whitney Houston | 1992年 |
| End of the Road | Boyz II Men | 1992年 |
| Dreamlover | Mariah Carey | 1993年 |
| Waterfalls | TLC | 1995年 |
| Un-Break My Heart | Toni Braxton | 1996年 |
| Real Love | Mary J. Blige | 1992年 |
| That’s the Way Love Goes | Janet Jackson | 1993年 |
| The Boy Is Mine | Brandy & Monica | 1998年 |
| Back & Forth | Aaliyah | 1994年 |
| One Sweet Day | Mariah Carey & Boyz II Men | 1995年 |