Radioheadはなぜ特別なのか──7年ぶりの再始動が証明した、時代を超えるバンドの本質
この記事でわかること
- 01.2025年、7年ぶりのツアーで世界を驚かせたRadiohead。その再始動を入口に、バンドが30年以上にわたって特別であり続ける理由を読み解く。
- 02.『Pablo Honey』から『A Moon Shaped Pool』まで──アルバムごとに音楽性を更新し続けたRadioheadの軌跡と、Thom Yorkeという音楽家の本質に迫る。
- 03.「Radioheadを聴いたことがない」人への入門ガイドと、長年のファンも頷く考察を語る。
2025年11月4日、マドリード。
Radioheadが7年ぶりにステージに立った。
最後のツアーだった『A Moon Shaped Pool』の公演が2018年8月に終わって以来、バンドとしての活動はなかった。
メンバーはそれぞれ個人プロジェクトで動いていた。
「Radioheadはもう終わりかもしれない」という声さえあった。
その沈黙を破ったヨーロッパ5都市でのツアーは、「7年間待った価値があった」という声で埋め尽くされた。
Rolling Stone誌のレビューは「世界になぜ彼らが必要かを思い出させた」と評した。
なぜRadioheadはこれほど特別なのか。
この問いに答えるために、バンドの30年以上の軌跡を辿ってみたい。
結成と初期──オックスフォードの5人
Radioheadは1985年、イングランドのオックスフォードシャー州アビンドンで結成された。
ボーカル・ギターのThom Yorke、リードギターのJonny Greenwood、ベースのColin Greenwood、ギターのEd O’Brien、ドラムのPhilip Selwayという5人編成だ。
当初は「On a Friday」という名前で活動していたが、1991年にTalking Headsの楽曲名から「Radiohead」に改名した。
EMIと契約後、1992年9月に最初のシングル”Creep”をリリース。
イギリスではほとんど注目されなかったが、海外での放送をきっかけに徐々に広まり、1993年のアルバムリリース後に再発売されたシングルはUKシングルチャートで7位を記録した。
『Pablo Honey』(1993年2月22日)──出発点
デビューアルバム『Pablo Honey』は1993年2月22日にリリースされた。
グランジの時代に生まれたこの作品は、U2的なアンセミックなロックとノイジーなギターが特徴で、”Creep”という世界的ヒットを生んだ。
しかしRadiohead自身はこのアルバムを「未熟な作品」として複雑な思いを持っており、”Creep”をライブでほとんど演奏しない時期が長く続いた。
デビュー作への距離感が、逆にこのバンドの向上心の強さを示している。
『The Bends』(1995年3月13日)──ロックバンドとしての覚醒
1995年3月13日にリリースされた2ndアルバム『The Bends』は、”Creep”一発屋の烙印を完全に覆した作品だ。
プロデューサーにJohn Leckieを迎え、ギターサウンドを主軸にしながら、より複雑な感情表現と緻密なアレンジを持つ楽曲群が揃った。
“High and Dry”、”Fake Plastic Trees”、”Just”、”Street Spirit (Fade Out)”──どの曲も「ロックバンドとして最良の状態」にあるRadioheadの姿を捉えている。
特にMUSINAの夏のロック名盤でも取り上げた通り、『The Bends』は夏の終わりの切なさに驚くほどよく合う作品だ。
『OK Computer』(1997年5月21日)──ロック史上最高傑作のひとつ
1997年5月21日リリース。
Radioheadの3rdアルバムにして、ロック史における最重要作品のひとつとして今も語り継がれる。
プロデューサーはNigel Godrichで、以降もRadioheadの主要プロデューサーとして全作品に関わることになる。
映画音楽、クラウトロック、エレクトロニカからの影響を取り込んだこの作品は、テクノロジーと人間疎外という現代的なテーマを、ロックという形式で表現した。
“Paranoid Android”、”Karma Police”、”No Surprises”──どの曲も時代を超えたスケールを持ち、現在もストリーミングで聴かれ続けている。
Album of the Yearの批評家スコアは94点で、ユーザースコアも93点(3万8000件以上の評価)という驚異的な支持を維持している。
『Kid A』(2000年10月2日)──音楽の常識を壊した夜
『OK Computer』の成功後、世界が次のRadioheadのロックアルバムを待っていた。
2000年10月2日にリリースされた4thアルバム『Kid A』は、その期待を完全に裏切った。
そして音楽史に残ることになった。
ギターはほぼ姿を消し、エレクトロニクス、ジャズ、クラシック音楽、クラウトロックの要素が前面に出た。
ロックバンドのアルバムとしてはあまりにも異質で、リリース当初は賛否両論を呼んだ。
しかし時間が経つにつれ、この作品の先進性と芸術性への評価は高まり続けた。
Album of the Yearのユーザースコアは91点(2万9000件以上)。
「ロックバンドが自分たちの最大の武器(ギター)を手放すことで、より大きな可能性を手に入れた」という逆説が、この作品の本質だ。
『In Rainbows』(2007年10月10日)──音楽業界を変えたリリース
2007年10月10日、Radioheadは7thアルバム『In Rainbows』をオンラインで「好きな金額で買える」という前例のない方式でリリースした。
音楽業界のビジネスモデルへの問いかけとして世界的な話題になり、後のストリーミング時代を先取りした。
内容面でも『Kid A』以降の実験性を保ちながら、より温かみのある感触を取り戻した作品だ。
ギターとエレクトロニクスが自然に共存し、Radioheadの音楽的探求の成熟を示している。
『A Moon Shaped Pool』(2016年5月8日)──現時点での最後の作品
2016年5月8日にデジタルリリースされた9thアルバム『A Moon Shaped Pool』は、Jonny Greenwoodによるオーケストラアレンジが全編を彩る、Radioheadのキャリアで最も叙情的な作品だ。
アンビエント、フォーク、チェンバーポップが融合した音楽は、長年のファンを含め高い評価を受けた。
UKアルバムチャートで1位を獲得。この作品を最後に、バンドとしての活動は長い休止期間に入ることになった。
2025年の再始動──7年の沈黙の後に
2024年末、Colin Greenwood がインタビューでメンバー全員でリハーサルを行ったことを明かした。
そして2025年3月、バンドは新たな法人「RHEUK25」を設立。
同年9月、ヨーロッパツアーの開催が正式に発表された。
マドリード(11月4・5・7・8日)、ボローニャ(11月14・15・17・18日)、ロンドン(11月21・22・24・25日)、コペンハーゲンなど、ヨーロッパ5都市での複数公演。
7年ぶりに5人が同じステージに立つ姿は、「まだ終わっていなかった」という確認だった。
Philip Selwayはツアー発表時にこうコメントした──「7年間のポーズの後、また曲を演奏できたのは本当に良かった。5人全員の中に深く根付いた音楽的アイデンティティに再接続できた」。
Radioheadが特別な理由──変わり続けることへの意志
Radioheadを一言で表すなら「変わり続けることへの意志」だと思う。
『Pablo Honey』のグランジからスタートし、『The Bends』でロックを極め、『OK Computer』で現代社会を音にし、『Kid A』でロックを解体し、『In Rainbows』で再統合した。
各作品でファンの期待を裏切り続けながら、その度に新しいリスナーを獲得してきた。
それはThom Yorkeという音楽家の「同じことをしたくない」という根本的な衝動から来ている。
サイドプロジェクトのThe Smileで2024年に2枚のアルバムをリリースしながら、並行してRadioheadへの帰還を果たした。
その飽くなき創作への意志が、30年以上にわたってRadioheadを特別な存在であり続けさせている。
まず聴くならこの3枚
『The Bends』(1995年3月13日)
Radiohead入門として最もとっつきやすい一枚。
ロックバンドとしての彼らの魅力が最も純粋に詰まっている。
『OK Computer』(1997年5月21日)
「Radioheadとは何か」を一枚で理解するならここ。
現代社会への問いかけが音楽になっている。
『Kid A』(2000年10月2日)
「なぜRadioheadはこんなに特別なのか」という問いへの答えがここにある。
聴くたびに発見がある。
| アルバム | リリース日 | 特徴 |
|---|---|---|
| Pablo Honey | 1993年2月22日 | デビュー作、”Creep”収録 |
| The Bends | 1995年3月13日 | ロックバンドとしての覚醒、入門に最適 |
| OK Computer | 1997年5月21日 | 批評家・ユーザー双方からロック史上最高傑作のひとつと評価 |
| Kid A | 2000年10月2日 | エレクトロニクス主体への大転換、後に高評価 |
| Amnesiac | 2001年 | Kid Aと同セッションから生まれた姉妹作 |
| Hail to the Thief | 2003年 | EMI最後のアルバム、ギターサウンドへの部分的な回帰 |
| In Rainbows | 2007年10月10日 | 「好きな金額で」リリースという革新的な流通方法 |
| The King of Limbs | 2011年 | ループリズムとアンビエントが中心 |
| A Moon Shaped Pool | 2016年5月8日 | オーケストラアレンジが全編を彩る現時点での最新作 |