THE STROKES──「金持ちの道楽」と揶揄されたバンドが、25年かけて証明したこと
この記事でわかること
- 01.THE STROKESは1998年、ニューヨークの私立学校で出会った幼馴染たちを中心に結成されたロックバンド。
- 02.2001年のデビューアルバム『Is This It』はガレージロック・リバイバルの起点となり、2020年『The New Abnormal』では悲願のグラミー賞を受賞。
- 03.2026年発表の新作『Reality Awaits』を携え、サマーソニック2026への出演が決定している。
「金持ちのお坊ちゃんたちの道楽」。
THE STROKESには、デビュー当初からそんな批判がつきまとっていた。
実際、その指摘はあながち的外れでもなかった。
ボーカルのジュリアン・カサブランカスは、モデル事務所大手エリート・モデル・マネジメントの創業者を父に、元ミス・デンマークのモデルを母に持つ。
10代の一時期はスイスの名門寄宿学校に通い、そこでギタリストのアルバート・ハモンドJr.と出会っている。
裕福な子弟が通うニューヨークの私立学校で幼馴染同士が出会い、バンドを組む。
その出自は、批判者たちの言い分を裏付けるには十分すぎるものだった。
それでも、THE STROKESは25年以上が経った今もなお、ロックシーンの中心付近に居続けている。
批判をものともせず生き残ってきたバンドの歩みを、振り返ってみたい。
私立学校の幼馴染から始まったバンド
結成は1998年。
マンハッタンのアッパーウェストサイドにある私立学校ドワイト・スクールで、ジュリアン・カサブランカス(Vo)、ニック・ヴァレンシ(Gt)、ファブリツィオ・モレッティ(Dr)が知り合い、非公式にバンド活動を始めた。
ジュリアンの幼馴染でフランス系の学校に通っていたニコライ・フレイチュア(Ba)も加わり、そこにジュリアンがスイスの寄宿学校で出会った友人、アルバート・ハモンドJr.(Gt)がロサンゼルスから合流。
5人が揃い、翌1999年に「THE STROKES」というバンド名が正式に定まった。
金持ちの道楽、と呼ばれたデビュー
2001年、THE STROKESはイギリスの独立レーベル、ラフ・トレードにデモテープを送り契約。
3曲入りEP『The Modern Age』が大きな話題を呼び、複数のメジャーレーベルによる争奪戦の末、RCAレコードと契約を結ぶ。
この頃、イギリスの音楽誌はこぞって彼らを「NEXT BIG THING(次に来る大物)」と持ち上げた。
同年8月、デビューアルバム『Is This It』をリリース。
同時期に登場したザ・ホワイト・ストライプスとともに、「ガレージロック・リバイバル」と呼ばれるムーブメントの中心的存在となる。
このアルバムのサウンドを特徴づけたのは、プロデューサーのゴードン・ラファエルが選んだ「引き算」の手法だった。
当時のニューヨークでは、多くのプロデューサーがProToolsの登場に沸き立ち、スネア1つに3本のマイクを立て、サンプル音を何層にも重ねる複雑な音作りを競っていた時代。
ラファエルはその真逆を行き、ジュリアンのボーカルにあえて歪みをかけ、ドラムの音数を切り詰めるミニマルなアプローチを選んだ。
この「引き算の美学」こそが、THE STROKESというバンドを他と決定的に分けるものになった。
アルバム収録曲「New York City Cops」は、当初イギリス盤に収録されていたが、リリース直前に起きたアメリカ同時多発テロ事件を受け、警察への敬意という理由からアメリカ盤では「When It Started」に差し替えられるという出来事もあった。
皮肉なことに、後年この曲はバーニー・サンダースの集会で演奏されており、その反権威的なコーラスは、時を経てもなお色褪せない力強さを保っていた。
ジャパンツアーの熱狂と、ヘッドライナーへの道
2002年2月、THE STROKESは初来日公演を行う。
チケットは即日完売となり、会場によっては急遽より大きな会場への変更を余儀なくされるほどの熱狂ぶりだった。
2003年には2ndアルバム『Room on Fire』を発表、「12:51」「Reptilia」がヒットし、同年8月にはサマーソニックにも出演している。
2006年の3rdアルバム『First Impressions of Earth』を経て、同年のフジロックフェスティバルでヘッドライナーを務めるまでになった。
しかし、このツアーを最後に、バンドは長い沈黙期間に入る。
メンバーそれぞれがソロやサイドプロジェクトに軸足を移し、アルバート・ハモンドJr.はソロアルバムを2枚発表、ファブリツィオはバンドLittle Joyを、ニコライはNickel Eye名義でのプロジェクトをそれぞれ始動させた。
グラミー悲願と「Ode to the Mets」
2011年、4thアルバム『Angles』でバンドとして本格復帰。
同年のサマーソニックでヘッドライナーを務めた。
2013年には5thアルバム『Comedown Machine』を発表するが、その後再び長い沈黙が訪れる。
7年の時を経て、2020年4月、6thアルバム『The New Abnormal』が発表された。
プロデューサーには、後の新作にもつながるリック・ルービンを起用。
このアルバムで、THE STROKESは結成から約20年越しとなる初のグラミー賞(最優秀ロック・アルバム賞)を受賞している。
授賞式は新型コロナウイルスの影響で延期されたが、2021年3月、ついに悲願を果たした。
アルバムの最後を飾る「Ode to the Mets」は、ジュリアンが2016年のナ・リーグ ワイルドカードゲームでニューヨーク・メッツが敗れた夜に着想を得て書いた曲だといわれている。
ロックスターの華やかな逸話とは対照的な、地元球団への愛着を綴った曲が、バンドの新たな一面を印象づけた。
コスタリカの山の上で生まれた『Reality Awaits』
2026年7月24日、THE STROKESは約6年ぶりとなる7thアルバム『Reality Awaits』をリリースした。
プロデュースは再びリック・ルービン。制作は、いつものニューヨークのスタジオを離れ、コスタリカの山の上で行われた。
ルービン自身は、このセッションについて「彼らは”海のためのコンサート”をしているようだった。
屋外で演奏する日々を過ごして、誰も帰りたがらなかった。最高の経験だったよ」と振り返っている。
先行シングル「Going Shopping」は、ポール・サイモンの名曲「You Can Call Me Al」のミュージックビデオへのオマージュとして制作され、シェヴィー・チェイスが演じた役どころを俳優ウォルトン・ゴギンズが務めた。
海外メディアの評価は割れており、ガーディアン紙は近年で最も強い作品の一つと評価する一方、ローリングストーン誌は「スリリングで、不可解で、時にひたすら奇妙」と評している。
ジュリアンのボーカルにかけられた強めのオートチューンについては賛否が分かれているようだ。
4月に出演したコーチェラ・フェスティバルでは、初期の代表曲「New York City Cops」「Take It Or Leave It」がセットリストに復活。
ジュリアンの集中力も途切れず、バンドとして極めて良い状態にあることを示すステージだったと伝えられている。
そして今年、THE STROKESはサマーソニック2026への出演が決定している。
25年以上のキャリアを経て、なお「今」を更新し続けるバンドの姿を、マリンステージで確認できる貴重な機会になりそうだ。