Khruangbin特集──「タイの飛行機」と名乗るテキサスの3人が鳴らす、国境なきグルーヴ
この記事でわかること
- 01.Khruangbinは、アメリカ・テキサス州ヒューストン出身の3人組で、2010年に結成。
- 02.タイのファンクやソウル、中東音楽など国境を越えた要素を融合させたインストゥルメンタル主体のサウンドが特徴。
- 03.2024年にはグラミー賞新人賞にノミネートされ、2026年のフジロックでは2日目のヘッドライナーを務めた。
先日振り返ったフジロック2026、2日目のヘッドライナーを務めたKhruangbin(クルアンビン)。
単なる「大物の代役」ではなく、フェス全体の音楽的な文脈を象徴する存在として起用されたこのバンドについて、改めて掘り下げてみたい。
教会のゴスペルバンドから始まった出会い
Khruangbinは、ベースのローラ・リー、ギターのマーク・スピアー、ドラムのドナルド・”DJ”・ジョンソンによる3人組で、アメリカ・テキサス州ヒューストン出身。
結成は2010年のことだ。
マーク・スピアーとDJ・ジョンソンは2004年、ヒューストンのセント・ジョンズ・メソジスト教会でゴスペルバンドの一員として演奏していたことがきっかけで出会った。
ここでスピアーがギタリスト、ジョンソンがオルガン奏者として雇われていたという。
その後、共通の友人を通じてローラ・リーと出会い、3人でのバンド結成に至った。
バンド名は「タイ語で一番好きな単語」
「Khruangbin」というバンド名は、タイ語で「飛行機」を意味する言葉(เครื่องบิน)に由来する。
当時タイ語を学んでいたローラ・リーが、自分の一番好きなタイ語の単語としてこの名前を選んだという。
バンドの音楽性そのものが、特定の国や地域に縛られない「越境」を体現していることを考えると、この名付けは象徴的だ。
デビューアルバム『The Universe Smiles Upon You』
2015年、Khruangbinはデビューアルバム『The Universe Smiles Upon You』を発表する。
このアルバムは、1960年代のタイのルークトゥン(タイの大衆音楽)やタイ・ファンクの歴史からインスピレーションを得た作品で、彼らの音楽性の原点を示すものとなった。
2018年の2ndアルバム『Con Todo El Mundo』では、スペインや中東の音楽からの影響を色濃く反映。
2020年の3rdアルバム『Mordechai』では、これまでインストゥルメンタル主体だったサウンドに、初めてボーカルを本格的に取り入れた。
そして2024年、4thアルバム『A La Sala』を発表し、同年グラミー賞の最優秀新人賞にノミネートされている。
ジャンルを横断するサウンドの正体
Khruangbinの音楽は、ファンク、サイケデリック・ロック、ソウル、ダブ、そして中東やタイの音楽的要素が渾然一体となった、一言では説明しづらいサウンドだ。
ボーカルよりもマーク・スピアーの残響豊かなギターが旋律の中心を担うことが多く、ローラ・リーのシンコペーションを効かせたベースラインと、DJ・ジョンソンのタイトなドラムが、独特の浮遊感を生み出している。
スピアー自身は、バンドの音楽づくりについて「型を決めて、その型の中を探求する」というスタンスを語っている。
実験のための実験ではなく、自分たちが何を探求しているのかを理解した上で音を鳴らす。
その哲学が、彼らの音楽に一貫した心地よさを与えているのだろう。
フジロック2026での起用が意味するもの
2026年のフジロックで、Khruangbinは2日目のGREEN STAGEヘッドライナーという大役を任された。
共同通信の取材によれば、主催のSMASHはこの人選について、フェス全体を単なる大物アーティストの物量勝負ではなく、一つの「体験」として成立させるための試みだと位置づけているという。
ジャンルも国籍も横断しながら、唯一無二のグルーヴを鳴らし続けるKhruangbin。
彼らのヘッドライナー起用は、今年のフジロックが提示した音楽的な文脈そのものを象徴するステージだった。