音楽プロデューサーという仕事──ヒット曲の裏側で音を設計する3人
この記事でわかること
- 01.ヒット曲の多くには、アーティスト本人だけでなく、その音を設計する音楽プロデューサーの存在がある。
- 02.Mr.Childrenを手がけた小林武史、椎名林檎を支えた亀田誠治、いきものがかりらを世に送り出した玉井健二の仕事を紹介。
- 03.それぞれ異なる時代、異なるアプローチで日本の音楽シーンを形作ってきた3人のプロデューサー像を追う。
ヒット曲を聴くとき、私たちはたいてい歌う人の名前だけを覚えている。
しかしその音の設計図を描いているのは、多くの場合、表舞台に出てこないもう一人の存在だ。
今回は、日本の音楽シーンを裏側から形作ってきた3人の音楽プロデューサーを紹介したい。
小林武史──Mr.Childrenを世に送り出した男
1959年、山形県新庄市生まれ。
1977年、18歳でバンド「RICKY&REVOLVER」に参加し、1981年にメジャーデビュー。
その後作曲家としても活動を始め、1982年には杏里の「思いきりアメリカン」を作曲してヒットさせている。
1988年からはサザンオールスターズのアレンジを手がけるようになり、1990年には桑田佳祐の初監督映画『稲村ジェーン』の音楽監督も担当した。
転機となったのは1992年。
まだ無名だったMr.Childrenのメジャーデビュー作『EVERYTHING』をプロデュースし、以降バンドの快進撃を支え続けることになる。
1995年には、自らボーカルにAKKO(akko)を迎えてMY LITTLE LOVERを結成。
プロデューサーでありながら、自分自身がユニットのメンバーになるという珍しい形での関わり方だった。
90年代半ばには、今なおファンから愛される名盤『深海』をMr.Childrenと共に作り上げている。
音楽活動と並行して、2003年には桜井和寿・坂本龍一とともに環境プロジェクト「ap bank」を設立するなど、音楽の枠を超えた活動でも知られている。
亀田誠治──椎名林檎の”師匠”と呼ばれるベーシスト
1964年、ニューヨーク生まれ。
幼少期からクラシックギターとピアノを学び、14歳からベースも始めた。
早稲田大学在学中に音楽ユニットを結成するも、大学卒業後にプロとしてのキャリアを本格的にスタートしたのは25歳のとき。
崎谷健次郎のバックバンドでベースを弾きながら、アイドルグループCoCoへの楽曲提供でアレンジャーとしての一歩を踏み出した。
1999年から椎名林檎の「幸福論」「歌舞伎町の女王」のアレンジを手がけたことをきっかけに、椎名林檎から絶大な信頼を置かれる存在となる。
2004年には椎名林檎らと東京事変を結成し、自らベーシストとしてバンド活動にも参加した。
その後、スピッツ、平井堅、GLAY、いきものがかり、JUJUなど、ジャンルを問わず数多くのアーティストのサウンドプロデュースやアレンジを手がけている。
2007年・2015年の日本レコード大賞編曲賞、2021年の日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。
近年はEテレの音楽教養番組「亀田音楽専門学校」で、J-POPの魅力を解説する顔としても親しまれている。
2019年からは「日比谷音楽祭」の実行委員長も務めており、プロデューサーという枠を超えて音楽文化そのものを支える存在になっている。
玉井健二──クリエイター集団agehaspringsを率いる仕掛け人
1971年、大阪府生まれ。
高校時代に結成したバンド「Re-selve」のボーカリストとして、高校在学中にメジャーデビューを果たした。
バンド脱退後はソロ活動を経て、音楽プロデューサー・木崎賢治のもとで音楽理論やヒットの作り方を学び、裏方としての道を歩み始める。
1999年にエピックレコードジャパンに入社し、レーベル所属プロデューサーとして経験を積んだ。
2004年、クリエイターズ・ラボ「agehasprings」を設立。
自身のプロデュース業だけでなく、蔦谷好位置、田中ユウスケ、田中隼人ら気鋭のクリエイターを見出し、次々と世に送り出してきた。
中島美嘉、Aimer、あいみょん、back number、yama、Eveなど、手がけてきたアーティストは世代もジャンルも幅広い。
玉井自身は自らのプロデュース哲学について、「新しいファンを連れてくること」と「今いるファンを圧倒的に満足させること」の2つが自分の役割だと語っている。
個人としてのヒットメイクだけでなく、次世代のクリエイターを育てる仕組みそのものを作り上げてきた点が、玉井健二という存在を特徴づけている。
裏方が支える、音楽の景色
アーティスト自身の作家性を最大限に引き出す小林武史、演奏家としての信頼を武器に楽曲の骨格を作る亀田誠治、そして次世代のクリエイターを育てる仕組みを作った玉井健二。
アプローチはそれぞれ異なるが、共通しているのは「アーティストの魅力を、聴く人に届く形に翻訳する」という仕事の本質だ。
次にお気に入りの曲を聴くときは、歌う人の名前だけでなく、その音を設計した人の名前にも目を向けてみてほしい。