COLUMN
レコード屋の店主と、30分も世間話をしてしまった
用件は、新しい針を一本買うだけだった。
近所のレコード屋に立ち寄ったら、結局30分も店主と世間話をしてしまった。
気づいたら最初の用件のことなど忘れて、お互いが最近聴いている音楽の話で盛り上がっていた。
その店主とは、もう10年近い付き合いになる。
最初は客と店員という関係だったが、いつの間にか「最近何聴いてます?」を聞き合う仲になっていた。
今日は彼が最近見つけた、知らないレーベルから出ている古いピアノトリオのレコードを聴かせてくれた。
こういう時間が、本当に貴重だと思う。
ストリーミングサービスのおすすめ機能は優秀だ。
アルゴリズムは私の好みをよく理解している。
でも、それとは全く違う種類の発見が、人との会話の中にはある。
アルゴリズムは「私が好きそうなもの」を提示するが、店主の話は「彼が本当に好きなもの」を、彼の言葉とともに届けてくれる。
その違いは大きい。
レコード屋という場所が、こういう偶然の会話を生み続けてくれることに、改めて感謝している。
今日見せてもらったレコードは、結局買わずに帰ってきた。
でも次に行くときには、きっとまた違う話をしているはずだ。
音楽の話は、いつも誰かと話すことで膨らんでいく。
レコード屋の店主との30分は、そのことを久しぶりに思い出させてくれた。
— 中條 隆之